北海道の釧路・根室エリアは、摩周湖や屈斜路湖、天然記念物のマリモで有名な阿寒湖など、森と湖のコントラストが映える「北海道らしい壮大な自然景観」が密集しているエリアです。自然界の神威を感じ、古のアイヌ民族の気持ちを体感できるような風景に出会えます。
※本記事は道東『釧路・根室編』です。
道東 オホーツク(網走・知床編)はこちら
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霧と断崖に護られた神の湖「摩周湖」
正面に位置するのは”カムイヌプリ(神の山)”摩周岳。標高857mの”カムイヌプリ”と”カムイ・トー”の、山と水の織り成す景色を、アイヌの人々は古くから神聖なものとして崇めてきました。
湖に孤独に浮かぶのは”カムイシュ島”。この島には、とある老婆にまつわる伝説があります。
“昔々、宗谷あたりのコタン(村)の酋長の一族が、隣のコタンの一族に襲われてしまいました。宗谷コタンの酋長は殺されてしまいましたが、酋長の母(老婆)は孫(酋長の息子)を抱え、命からがら落ち延びました。しかし、山中を逃げ回るうちに、大事な孫とはぐれてしまったのです。孫は探せど見つからず…老婆は摩周湖のほとりに辿り着きました。老婆は”カムイヌプリ”に一宿の許しを得て、摩周湖で眠りにつきました。そして、悲しみ疲れ果てた老婆は摩周湖で休むまま、島になってしまいましたとさ”
この島に渡ろうとすると、老婆が”孫が来てくれた…”と思い、嬉し泣きをするので晴天でも突如雨が降ったりするそうな。
悲しい伝説の残る摩周湖ですが、その景色は絶景の一言です。”摩周ブルー“と呼ばれる、澄んだ青い湖。訪れてみてください。
※スライドショーに空撮写真を1枚入れましたが、これはドローン撮影ではありません。飛行機で中標津空港利用の場合、運が良ければ空から摩周湖、屈斜路湖を望むことができます。私は中標津空港⇒羽田空港のルートで右側席でみることができました。シャッターチャンスは一瞬ですが、飛行機で中標津空港を利用される際は、是非狙ってみてください!
備考 |
冬季は車両でのアクセス不可。 |
駐車場 |
摩周湖第1展望台:あり 摩周湖第3展望台:あり(無料) |
マップコード | 摩周湖第1展望台:613 781 491*55 摩周湖第3展望台:613 870 628*24 |
荘厳なる国内最大のカルデラ湖「屈斜路湖」
屈斜路(くっしゃろ)湖は、火山噴火によってできた窪み=”カルデラ”に水が溜まりできたカルデラ湖です。
約10万年前、この地で大規模な火山爆発があり、その時に屈斜路湖のカルデラや、その湖を取り囲む山々が形成されたとされています。カルデラ湖としての大きさは日本一であり、世界的に見ても指折りの規模なのだそうです。
屈斜路湖を一望できるスポットとして、“美幌(びほろ)峠“と”津別(つべつ)峠“があります。
どちらの展望台からも屈斜路湖を一望の大パノラマが望めますが、美幌峠が標高493mなのに対して、津別峠は約2倍の標高947mなので、湖全体を見渡すという観点では津別峠に軍配が上がります。ただ、津別峠展望施設までの道は、急カーブの続く山道となっているため、酔いやすい方、運転に自信のない方にはあまりお勧めはできません。
美幌峠の方が圧倒的にアクセスがしやすく、道の駅も併設されているので滞在しやすいです。美幌峠からの眺望でも十分綺麗なので、無理せず自身に適した方の峠から景観を楽しみましょう。
尚、屈斜路湖は雲海スポットとしても有名で、例年、6月~10月の早朝に雲海を見ることができます。雲海が見たい方は、頑張って早起きしてどちらかの峠に向かってみてください。前日の日中と翌日の早朝の寒暖差が大きい(目安は10℃)場合、雲海の発生が期待できます。
備考 |
◆美幌峠(道の駅:ぐるっとパノラマ美幌峠) |
マップコード | 美幌峠 : 638 225 488*84 津別峠 展望施設 : 739 867 881*86 |
神秘の湖水をたたえる断崖を一望「裏摩周」
裏摩周展望台。ここからみた摩周湖は、第1・第3展望台からの景色に勝るとも劣らない、違う顔を見せてくれます。
真っ青な神秘の湖水をたたえる、反り立つ断崖の壁。
そして、神秘の湖を見下ろす神の山、カムイヌプリ。
摩周湖第1・第3展望台から見るカムイヌプリからは雄々しさ、猛々しさを感じますが、裏摩周展望台から見る山は丸みを帯び、どこか優しげに感じられます。心地良いそよ風と共に「ずっと、この景色を見ていられる」。そんなスポットです。
ここ裏摩周は、摩周湖第1・第3展望台(弟子屈町)とは摩周湖を隔てて対岸に位置しています。お互いの展望台を直接行き来できる道路はなく、第1・第3展望台からのアクセスはだいぶ悪いので、裏摩周を観光する際は近くの人気スポット『神の小池』とセットで観光することをお勧めします。
備考 |
冬季は車両でのアクセス不可。 |
駐車場 |
有り(無料) |
マップコード | 910 038 689*06 |
大地の息吹、硫黄の噴煙地帯「硫黄山」
摩周湖のほとり、川湯温泉のほど近くに「硫黄山」と呼ばれる荒涼とした景色が広がっています。
硫黄山はアイヌ語で”アトサヌプリ(裸の山)”と言い、緑豊かな自然が広がる道東でもこの地の山肌には草の根一本生えていません。これは、地面から噴出される火山ガスの影響だそうで、噴気孔の周辺では植物がほぼ生育できない環境となっているためだそうです。
硫黄山に足を踏み入れると、真っ黄色の大きな硫黄の塊が出迎えてくれ、’ゴウゴウ’山肌から吹き出る噴煙、煮えたぎる地面から’シューッ’と音を立て吹き出る蒸気を間近に感じられる、とても珍しい光景が眼前に広がります。尚、地面から吹き出ている蒸気は非常に高熱なのでやけどに注意してください(靴を近づけるなども絶対にやめたほうがいいです)。また、火山ガスは体にもよくない※ので、多量に吸い込まないよう気を付けましょう。※昔、硫黄採掘が盛んであったころ、硫黄山では硫黄の粉と亜硫酸ガスによる失明者が相次いだそうです。
硫黄山近くの道路を車で走ると、窓を閉め切った車内でもかなりの硫黄の臭いがします。
おならを我慢している場合は、どさくさに紛れて音をたてないように…こちらでどうぞ。
駐車場 | 有り(無料) |
マップコード | 731 713 798*37 |
原生林に囲まれた不可侵の湖「ペンケトー」
ペンケ・トーはアイヌ語で”上の・湖”を意味します。下流にも湖があり、そちらは”パンケ・トー(下の・湖)”と呼ばれています。
ペンケトー・パンケトー周辺は、「阿寒摩周国立公園」の特別保護地区に指定されていることに加え、ヒグマの縄張りである深い原生林に囲まれているので、陸路で向かって湖畔に立つなどはできません。
観光は、国道241号にある「双湖台展望台」から見る形になります。”双湖台”と言いますが、残念ながら見えるのはペンケトーのみ。パンケトーは私が撮った写真の通り、ペンケトーの左奥に…ごく一部、その姿を視認できる程度です。
双湖台展望台には展望施設は特になく、またペンケトーの説明看板なども特にありませんが…不可侵の原生林の中に位置する、北海道にも似た形のペンケトー。美しい佇まいなので、見る価値はあると思います。
駐車場 | 有り(無料) |
マップコード | 739 414 506*01 |
天然記念物の御霊を宿す「阿寒湖」
阿寒湖は、摩周湖や屈斜路湖同様に火山噴火によって形成された、北海道で5番目に大きいカルデラ湖です。湖の東側には雄阿寒岳がそびえたっており、湖畔からは阿寒湖と雄阿寒岳の風光明媚な景観が望めます。また、湖にはベニザケの陸封型※である「ヒメマス」が生息しています。
※淡水域(川や湖)で生まれ、海域で成長して淡水域に戻って産卵するという習性をもつ魚類が、環境の影響を受け、海域ではなく湖や川などに留まったもの。
阿寒湖と言えば、やはり天然記念物の「毬藻(まりも)」が有名ですね。まりもは、アイヌ語で”スカナキップ(丸いもの)”や”トーラサンペ(湖の御霊)”と呼ばれるそうです。まりも自体は阿寒湖以外にも存在するそうなのですが、世界中を見渡しても、阿寒湖ほどの大きさのまりもが群生する場所は無いそうで、国の特別天然記念物に指定されています。阿寒周辺の大地が育む綺麗な水質と、阿寒湖の地形がもたらす独特の湖の水流が、湖底でまりもを回転させることで、大きな丸いまりもとなるそうです。
「阿寒湖に来たからには、まりもが見たい!」というところです。阿寒湖の湖畔に立って湖をのぞき込んでも、天然のまりもは見ることはできません。まりもは陸からも湖からも立ち入りが禁じられている阿寒湖の北部の一部でのみ群生しているためです。
まりもを見られる場所は2か所あり、1か所目は、阿寒湖畔から出ている阿寒湖遊覧船で行ける、まりもの生息地近くのチュウルイ島にある「マリモ展示観察センター」。世界一の球状まりもや、ヒメマスやイトウなどの、阿寒湖に生息している魚の展示がされている施設です。※詳しくはこちら(阿寒観光汽船ホームページ)
2か所目は阿寒湖の湖畔にある「阿寒湖畔エコミュージアムセンター」。こちらは入場無料なのが嬉しいです。
時間が許すのであれば、遊覧船で阿寒湖の雄大な景色を湖上から堪能した上で、大きなまりもを見ることができる「マリモ展示観察センター」でのまりも観察を是非お勧めします!
備考 | ■阿寒湖畔エコミュージアムセンター [入場料]無料 [営業時間]9時~17時 [定休日]火(祝日の場合、翌日休館) ※専用駐車場はありません。阿寒湖周辺の駐車場を利用し、徒歩での利用となります。 |
駐車場 |
有り(有料/無料 両方あり)。おすすめは下記の駐車場。 |
マップコード | 阿寒湖商業振興協同組合 湖岸駐車場:739 341 711*03 アイヌコタン利用者第二駐車場:739 341 693*28 |
雄大な雌雄の頂「双岳台(雄阿寒岳/雌阿寒岳)」
双岳台は、弟子屈町と阿寒湖を結ぶ国道241号の途中にある”雄阿寒岳”と”雌阿寒岳”を一望できるスポットです。アイヌ語で雄阿寒岳は”ピンネシリ(男の山)”、雌阿寒岳は”マチネシリ(女の山)”と言います。
正面に大きく見えるのは雄阿寒岳。左奥に佇むのは雌阿寒岳。道路脇にある何気ない展望スポットですが、雄大な景色が広がります。
駐車場 | 有り(無料) |
マップコード | 739 446 359*67 |
アイヌ文化が息づく「阿寒湖アイヌコタン」
阿寒湖畔にある”阿寒湖アイヌコタン”。コタン正面入り口では大きなコタンコロカムイ(”村を守る神”こと、シマフクロウ)が出迎えてくれます。歴史的には、1959(昭和34)年に、前田一歩園財団の3代目園主である前田光子氏が、アイヌの人々が住処を追われないよう、文化が失われないよう、生活するための土地を無償で提供したことから始まった場所とされています。公式サイトによると、36戸・約120名の人が暮らしており、阿寒湖アイヌシアター”イコㇿ”や、民俗資料館をはじめとする、観て学べるアイヌ文化の施設と、アイヌの民芸品・飲食店で構成されている観光地となっています。
阿寒湖アイヌシアター”イコㇿ”では、アイヌの伝統舞踊を観ることができます。私が訪れた際には、色々なアイヌ舞踊を見せてもらった最後に、希望者で舞台に上がって円になって踊る催しもありました(みんな恥ずかしがって壇上に上がろうとしないので、訪れた際は積極的に参加してあげてください笑)。
お土産屋は、ウッドクラフトや刺繍品が多めです。アイヌ独特の模様の工芸品が並んでおり、小物が好きな人はとても楽しめると思います。
備考 | 阿寒湖アイヌコタン公式ページ |
駐車場 | 有り(無料) |
マップコード | アイヌコタン利用者第二駐車場:739 341 693*28 ※第一駐車場は10台ほどのスペースしかなく狭いので、第二駐車場がおすすめです |
煮え立つ大地「ボッケ遊歩道」
阿寒湖畔にある「ボッケ遊歩道」。”ボッケ”はアイヌ語で”煮え立つ場所”という意味です。
遊歩道を行くと、あちこちで柵に囲われた泥が(ゴボッ…ゴボッ…)と音を立てて沸き立っているのが見えます。ボッケとは泥火山のことであり、湧き出ている気泡の正体は火山ガス。煮え立つ泥はなんと約100度とのことです。少々地味なスポットですが、他では見られない面白い自然現象が見られます。
※沼にはまった場合、きっと火傷では済まないので、柵の中には絶対に立ち入らないようにしましょう。
備考 | 阿寒湖畔エコミュージアムセンターから、徒歩約15分 |
駐車場 | ※阿寒湖の駐車場を利用 |
マップコード | ※阿寒湖から徒歩で観光 |
この世の果て「野付半島」
野付半島は、知床半島と根室半島の中間に位置する、「この世の果て」とも表されるような荒涼とした景色が広がる場所です。
海流により運ばれた砂が堆積して形成された、砂嘴(さし)と呼ばれる珍しい地形で、全長26キロという長さを誇る、日本最大の砂嘴となっています。
野付半島の荒涼とした景色に代表されるのが、”トドワラ”。これは、立ち枯れしたトドマツ林のことをそう呼称するそうで、筆者が昔見た写真では、白骨化したトドマツがいくつも立ち並ぶ、それはそれは「この世の果て」と形容するに値する写真だったのですが。このトドワラ、相当にもろいようで、度重なる台風や防風、高波により、数年で一気に消滅してしまったとのことです。私が2017年の秋に訪れた際には、もう既に写真の一角にしか求めるような景色は残っておらず。あと数年もしたら完全消滅しかねないので、トドワラをその目で見たいという方は、早めに行くことをお勧めします。
駐車場 | 有り(無料) |
マップコード | 野付半島ネイチャーセンター Mapcode: 941 610 500*76 |
「釧路湿原」
空から見たらすごいんだろうけど…。湿原だけあって、湿度が高くムシムシします
「風連湖」
オオハクチョウやタンチョウヅルなどの野鳥の宝庫だそうな。朝陽がきれいでした。
「納沙布岬」
本土最東端。返せ!北方領土!巨大なゲートがあります。
「道の駅あいおい」
国鉄相生線で走っていた電車が見られます。電車が好きな人はぜひ!”クマヤキ”なる食べ物も売ってます。
おわりに
いかがでしたでしょうか。この記事で行ってみたい!と思える場所が見つかったのであれば、うれしいです。北海道については、他記事の「道南編」「道央編」「道北編」「道東・オホーツク編」「十勝・帯広編」も、もしご興味があれば覗いてみてください!