【騎士団の街】バレッタ(マルタ)~リアルドラクエの世界~" />

【騎士団の街】バレッタ(マルタ)~リアルドラクエの世界~

*「ここはマルタ共和国の首都”バレッタ(ヴァレッタ)”じゃ。マルタ島に訪れた多くの者たちが最初に向かう地であり、マルタ観光の拠点ともなる島の中心地じゃな。

1565年当時、侵攻の勢い凄まじく、地中海全域をその手中に収めんとするオスマン・トルコ帝国海軍が、約5万の大軍を率いてマルタ島に押し寄せた。これを迎え撃ったのが、聖ヨハネ騎士団(後のマルタ騎士団)49代グランドマスター、その名も”ジャン・ド・ヴァレット”じゃ。後世の世で『マルタ大包囲戦』として謳われるこの戦いは、まさに血で血を洗う凄惨な戦であったとのことじゃが、ヴァレット総長率いるマルタ騎士たちは、当時最凶として恐れられたオスマン帝国海軍を見事返り討ちにし、このマルタ島を死守したのであった。
大戦の後、今のバレッタの地に防衛拠点を兼ねた新都市の建設が始まったが、包囲戦での功績から、街にはヴァレット総長にちなんだ「Valleta(バレッタ)」の名がつけられることに相成った。残念ながらヴァレットは老衰のために街の完成前に亡くなるが、彼は今でも聖ヨハネ大聖堂の地下に眠り、この地を守っているという

空港を始め、マルタ島各地からヴァレッタの街にバスで到着した際のメインエントランスとなる「トリトン・ファウンテン」。※トリトン:ギリシャ神話の海神”ポセイドン”の息子。半人半魚の姿をしている。
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*「ここがマルタの首都、要塞都市”バレッタ”じゃな。街全体が世界遺産に登録されておるぞ。はちみつ色の建物が美しい、珍しい街並みじゃ」
深い堀にかかる街への入口「ヴァレッタ シティゲート」。街への出入り口は少ないため、日中はとても混みあう
敵が上陸した時の為であろうか。陸地に面した街の南側には、かなり深い堀がある
*「ここはヴァレッタの街だ。この道をまっすぐ行けば”聖ヨハネ大聖堂”や、”騎士団長の宮殿”などの街の中心にたどり着くぞ」
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*「マルタ騎士団長の宮殿とな。新しい街に着いたら、街の代表のもとへ挨拶に行くのはRPGの鉄則じゃな!散策がてら、街をぐるりと回ってみるとしよう」
ヴァレッタシティゲートから一直線に延びる「Republic Street(共和国通り)」
バレッタでは頻繁に何かしらのイベントをやっているが、混雑時は写真の様にRepublic Streetがごった返す。通行困難になるので迂回して観光しましょう
*「ヴァレット総長にはもうご挨拶されましたか? …え?まだですか。
ほら、あそこに立っておられますので、一緒に写真などいかがでしょうか」
Republic Streetから”アッパー・バラッカ・ガーデンズ”に向かう途中、ヴァレット総長の像が立っている
この地を訪れた観光客は、彼と並んで写真を撮るのが定石だ
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*「なんとも凛々しい銅像じゃ。それでいて仰々しい台座などではなく、人々と同じ目線に立っている。飽くまでも想像じゃが、きっと部下の騎士や人々から愛される人物であったのであろう」
 

アッパー・バラッカ・ガーデン
*「ここは”アッパー・バラッカ・ガーデン”だよ。対岸に”スリーシティーズ”っていう3つの街が見える展望スポットさ」
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*「なるほど、気持ちのよい眺めじゃ。海に向かって配置された大砲が、オスマン帝国との大戦を彷彿とさせるのう」
*「毎日12時(正午)と16時に、空砲を打ち鳴らすんだ。迫力満点だから時間が合えば見ることをおすすめするよ。
ただすごく混むから、ちゃんと見たいなら30分以上前には向かった方がいいよ」
 
※大砲のすぐ近くで見たい場合は、下層フロアへの入場料が必要。デッキから見る分には無料です。
 

街並み①
 
*「(ガシャ ガシャ ガシャ…) ふぅ。今日も鎧が重いぜ」
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*「バレッタの町は坂が多くて、騎士さんは大変そうじゃのう」
※実際は、騎士は街中にはおりません

*「ウム、旅のものか。せっかく来たのだ。マルタ騎士団の街、バレッタの街をよく観察してみてほしい」
ほとんどの主要な坂道には、段差の小さい階段が設けられている。これは…?
*「この坂道に備えられた段差の小さな階段は、我々マルタ騎士のために考えられたものだ。
我々がまとっているこの鎧(プレートアーマー)は重さが20kg以上もあって、実は歩くだけでも大変なんだ。坂だらけのバレッタの街を、我々が鎧を着たままでも無理なく移動できるように、小さな段差の階段が作られたのさ」
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*「なるほど。騎士が街を造れば、自ずと騎士にとって最適な街が造られるわけじゃな。……なに?”下りは坂道をスベれば早く移動できる”、じゃと?
けつがもげるぞ」
海が見える街
*「もう一つ、この街の特徴を教えてやろう。バレッタは他の街と違って、賽の目状に道が整備されているんだ。
これは、敵が海から軍船で攻めてくることを想定し、どこからでも海の状態を目視で確認しやすいように見通しが良い道路を作った結果だ。覚えておくといい」
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*「なるほど。確かに敵情をいち早く察知することは、戦において重要じゃからのう。勉強になったわい」
*「もう一つ、この街の特徴を教えてやろう。」
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*「なんじゃ、まだあるのか」
これはひどい。ただ、画にはなる…
*「これを見ろ。マルタ名物、”路上駐車”だ!
醜くも、ぎっしりと詰めて駐車された数々の車…もはや美しささえ感じる。車の間から飛び出して、ひかれないように気を付けて観光しろよ!」
美しい出窓の街並み
地獄の階段。フルプレートアーマーをまとった騎士は絶望して見上げたことであろう
 

ロウワー・バラッカ・ガーデン
ギリシャの神殿を思わせる、新古典主義様式建築の建物が目を引く。自然豊かな公園
*「ここはロウワー・バラッカ・ガーデン。マルタの人々の憩いの地よ」
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*「こちらの公園は静かなものじゃな。鳥のさえずりが聞こえてきおるわい」
*「あの大きなモニュメントは、第二次世界大戦で犠牲となったマルタ島の人々を祀る記念碑よ。私のご先祖さまもその戦争で亡くなったの」
1940~1942年の第二次世界大戦中、マルタは2度目の包囲攻撃を受けた。主にイタリア空軍による爆撃で7,000人もの兵士と民間人が命を落とした
 
聖パウロ(セントポール)難破船教会(St Paul of the Shipwreck Church)
 
*「ここは”聖パウロ難破船教会”。バレッタで最も古い教会の一つです」
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*「大理石の内装が美しい教会じゃな。…むむ、この首の乗ったオブジェはなんじゃ?」
*「こちらは、聖人である”聖パウロ”が斬首された際、台座とされた切株です」
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*「頭部ではなく、下の台座が重要な展示物ということじゃな」
*「そしてこちらが聖遺物、”聖パウロの右手首の骨”です!」
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*「…熱心なキリスト教徒にはよいかもしれぬが、なかなかショッキングな展示物じゃな」
イギリスの直轄植民地であったマルタ。主要な建物の出入り口付近には、2022年まで英国君主であった、エリザベス2世の”ロイヤル・サイファー(紋章)”が埋められている
街並み②
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*「街中でたまに見かける、この中が空っぽの赤い箱は何であろうか」
どこかで見たことあるぞ…
*「それは、電話ボックスですよ。今は使われていませんがね。
イギリスの首都 ロンドンにも同じものがたくさんありますが、マルタがイギリスの植民地であったころ、そこかしこに電話ボックスが配置されたのです」
こちらは”TELEPHONE”の文字がきちんと残っている
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*「なるほど。現代では電話ボックスもお役御免というところじゃが、一部は観光客用に今でも残しているというわけじゃな。
…ふぅ、そろそろ疲れてきたわい。どこかで休みたいものじゃが…」
*「休憩できるところをお探しですか?
それならば、”Caffe Cordina(コルディナ)”がおすすめですよ。絢爛豪華な内装のマルタ最古のカフェで、リコッタチーズの”Pastizzi(パスティッツィ)”が名物よ 」
カフェ・コルディナ。マルタ国立図書館や騎士団長の宮殿のほど近くにある。外観は地味だが、時間帯を問わずいつも人が並んでいる
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*「おしゃれなカフェじゃな。どれ。ここで一服してから散策の続きと行こうではないか」
歴史あるカフェだけあって、内装はとても豪華
リコッタチーズのパスティッツィが名物。1つ100円程度で買える。テイクアウトも可。(混んでいたので筆者はテイクアウトしました。お店ではお皿にのって出てきます笑)
聖エルモ砦
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*「おぉ、何やら物々しい巨大な建造物じゃ。砦のようじゃな」
*「ここは”聖エルモ砦”だ。オスマン帝国が攻め込んできた、かのマルタ大包囲戦において最前線となった由緒ある砦だ。
現在は戦争博物館になっていて、マルタ大包囲戦や、第二次世界大戦に関わるの展示がされているぞ。」
※時間の都合と、疲労もあり筆者は入りませんでしたが、口コミは上々。€10/大人(※2025年料金)です。
 
騎士団長の宮殿
エントランスではマルタの歴史や、歴代グランドマスター(騎士団長)の紹介がされている。マルタ大包囲戦で活躍し、街の名の由来にもなったヴァレット将軍は大きく取り上げられている
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*「だいぶ回り道をしたが、やっと騎士団長の宮殿にたどり着いたぞ。
マルタに来たからには、マルタ騎士団の団長の宮殿、入ってみたいではないか。いざゆかん!」
騎士団長の宮殿は、現在マルタの政府機関として使われている。この部屋でいくつもの重要な作戦会議が開かれたことだろう

天井にも”マルタ十字”の装飾がなされている
壁際には騎士たちの鎧が。今にも動き出しそうだ!
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*「騎士の威厳が感じられる、荘厳な廊下じゃな。両脇の鎧が今にも動き出しそうで雰囲気満点じゃ!」
*「廊下に立ち並ぶ鎧は、当然レプリカなどではなく全て本物だ。兵器庫を見てみろ。鎧や剣は山ほどあるからな。置き場がなくて困っているくらいだ。はっはっはっ」
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*「ほう。それは楽しみじゃわい…。どれ、噂の兵器庫はここじゃな。」
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*「これはすごい規模の展示じゃな。一つ一つの武器・装備が丁寧に展示されていて、とても心躍るわい!」
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*「な、なんじゃこれは…だいぶコミカルな面じゃな。マヌケなお面で油断させて隙を突く作戦じゃな。きっと」
「やぁ。」
「お茶でもどお?」
*「状態の良いものを展示しているが、それでも細かな傷、凹みがあるのがわかるだろう。実戦の跡の一つ一つが、マルタ騎士団の歴史であり誇りだぞ。はっはっはっ」
「シルバートレイ」
「はがねのよろい」※プレートアーマー
「皮のたて」「くさりかたびら」
「はがねのつるぎ」
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*「武具好きなものにはたまらん空間じゃ。見ごたえ抜群であったな。
さて、バレッタの街もだいぶ見て回ったが、最後にこの街で一番有名と言っても過言ではない場所に向かうとしよう」
 
聖ヨハネ大聖堂
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*「さて、ここがバレッタの街に訪れた者たちが、必ず立ち寄るという『聖ヨハネ大聖堂』じゃ!
入った瞬間、圧倒される絢爛豪華な内装じゃな」
*「ようこそお越しくださいました。ここは聖ヨハネ大聖堂。マルタ大包囲戦でのオスマン帝国撃退後、騎士団員ゆかりの有力貴族からの莫大な寄進によって1578年に建てられた、栄誉ある聖堂です」
*「天井には、騎士団の守護聖人『聖ヨハネ』の生涯が描かれ、身廊の床は、約400枚のモザイク画で埋め尽くされております」
ドイツ礼拝堂
*「身廊の両側には、マルタ騎士の出身地別に、”プロヴァンス”,”フランス”,”イタリア”,”オーヴェルニュ”,”アラゴン”,”イングランド”,”ドイツ”,”カスティーリャ=レオン”の8つの礼拝堂があります」
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*「ほう、そうか。 マルタが一つの国として独立したのは1964年。マルタ騎士が活躍した当時は”マルタ”という国は無く、マルタ出身のマルタ騎士はいなかったということじゃな」
「アラゴンの礼拝堂」。8つの礼拝堂の中でも最も豪華なものの一つ。
*「こちらは、イタリアのシエナ出身『ゾンダダリ騎士団長』のモニュメントです。在位2年と団長として活躍した期間は短かったのですが、当時の騎士団の人々の間で人気を博し、このような立派なモニュメントが造られました。ただ、大きすぎてイタリアの礼拝堂に入りきらず、大聖堂の壁際に置くことになりました」
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*「モニュメントの中央で横たわっているのが、ゾンダダリ騎士団長じゃな。ブロンズと大理石でできた立派な碑じゃな」
*「当大聖堂には、貴重な絵画も納められております。それがこちら、カラヴァッジョ作・『洗礼者ヨハネの斬首』です。」
*「カラヴァッジョは、バロック美術の礎を築いた革新者ではありますが、ナポリで人を殺めてマルタに流れてきた”ならず者”でもありました。素行の悪いカラヴァッジョは、この絵を描いた後、騎士と揉め事を起こし行方知れずに。その生涯をどこでどう終えたのか判っておりません」
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*「ふむ。芸術に秀でた問題児であったのじゃな。残念ながら、ろくな死に方はしておらんじゃろうな」
この人は…!
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*「さて、見どころ満載であったが、バレッタの街もこれで見納めじゃ。…なに?この人は知っている、じゃと?
…”フランシスコ・ザビエル”。おぬしの故郷のジパングに、16世紀にキリスト教の布教に来た人物とな。 頭がハゲているので、子供に人気があった?なんじゃそれは」
*「・・・こほん。あれはハゲではございません。”トンスラ”という、十字架にかけられたイエス・キリストの茨の冠を象徴する髪型で、聖職者が伝統的に行っていたものです。」
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*「なるほど。最後に勉強になったな。しかし、せっかくある髪を剃るなど、つるつるのワシからしてみれば理解できん…。
さぁ、元の世界に戻ろうか。」