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自転車日本一周

2010年、大学の休みを利用して自転車で日本一周をしました。

自転車旅行を終えたあと、「なんでやろうと思ったの?」という動機や 「一日どれくらい走るの?」という質問をもらうことがあったので、楽しかったこと、苦労した話をここに書き留めておきます。
少しでも、これから自転車旅をしようと考えている方のご参考になれば。

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旅の目的

「自分の生まれた国のことを、自分の力で見て巡りたい」
この一言に、自転車旅行をしようと思った動機の全てが詰め込まれています。

子供の頃って、見るもの全てが新鮮で刺激がありましたよね。誰もがそうだと思いますが、大人になるにつれて、世の中に対する感動も段々と薄れてきて、 時流の体感速度も徐々に上がっていきます。しかし、毎日が新鮮で充実していれば、そんなこともないのかもしれません。

 高校卒業時、初めて一人旅をしました。夕方に目的地に着いたものの、やりたいことや見たいものを一切決めていなかったので、とりあえず「夕陽を見よう!」ということで、 走って山を登りました。今思えば、謎の行動です。笑
汗だくになりながらも日没間際、なんとか山肌に沈む太陽をこの目で見ることができました。3月の夕暮れ時の風がとても気持ちよく、太陽が完全に山の向こうに沈むまで景色を眺めていました。
陽が沈みすっかり暗くなった山道をくだり、夕食にありつこうとしたものの、夜の7時には大抵の飲食店は閉まっており、開いていたのは場末の居酒屋だけ。当時未成年であり、居酒屋という場に警戒心のあった私は、 ミ○ドでドーナツを5つも買い、それを夕食としました。そんな一見惨めとも思えることも、全てが新鮮で、ワクワクするものでした。それからというもの、一人旅の世界が好きになり、 コンパクトデジカメを片手に、中国地方を中心に何度も一人旅をするようになりました。

 普通の旅行を何度かしているうちに、少し違ったことがしてみたくなり、自転車旅行をすることを決意しました。内容は、東京の自宅から徳島まで自転車で行って、フェリーで帰ってくるというもの。実行に際しては準備という準備もせず、 クロスバイクを買ったこと意外はルートを決めただけ。カジュアルな服装で自転車に跨ってひたすら走り、2日半で京都に到着しました。京都観光の後、無事に徳島まで進み、フェリーで帰宅。
 この旅の中で、自転車旅行の様々な魅力に気がつかされ、自転車日本一周を行ないました。私が感じた自転車旅行の魅力について、メモしておこうと思います。

自転車旅行の魅力

 まずは、公共交通機関を利用した旅よりも、他人との距離が近いこと。
「がんばってね!」と、差し入れを頂いたり、宿代をおまけしてもらったり、休憩中に地元の人と会話したり。話しかけてくるおじさんは高確率で「私も若い頃にねぇ」と 思い出話をしてくれます(ただ、大体長くなるので急いでいる時には少し困ります 笑)。
こういったことは、それまでの旅行ではあまりなかったことでした。

次に、目的地までの景色がゆっくり楽しめるという点です。
自動車や電車と異なり、景色がゆっくりと流れるため、気になった景色があれば、その都度止まって写真を撮ったり、気になったお店があったら気軽に寄ってみたりすることが可能です。スタートからゴールまで景色が一枚絵で繋がっているので、普段見落としがちな魅力的な景色に出会うことができます。

自転車旅行の魅力はまだあります。それは食べ物がとても美味しく感じられることです。
例えそこらのコンビニのおにぎりや飲み物であったとしても、思わず「うまい!」と言いたくなるほど、美味しく感じます。なぜでしょう。
実は、サイクリングというのは、とても体力を使うスポーツなのです。体に高い負荷をかけずに長時間運動することが可能であり、丸一日走れば消費カロリーは3000kcalにもなると言われています。 私が真夏に東京から北海道の函館まで走った際、1週間で82kg⇒72kgと、なんと10kgも体重が落ちていました。道中、こまめに結構な量の食糧補給をしていたにも関わらずです。腹が減っては戦ができぬ。俗に言う「空腹に勝る調味料なし」というやつですね。

最後に、これが最も魅力的なこと。それは、毎日、大きな達成感を得られることです。
毎日、その日の体調や天候、目的地までの距離・峠の数、寄りたい観光地を考慮してプランを立てて、苦労した上で、達成する。 「今日は●キロも走った!」「昔、飛行機で来た場所に、自転車で来た!」「素晴らしい写真が撮れた!」といった感動や、 「3回もパンクして大変だった…」「坂がきつかった…」「ハチに追い回された…」という苦労を毎日する。毎日が、やり遂げた達成感で充実しており、その積み重ねが、また次の一日を創ってゆく。 自身の成長が手に取るようにわかる。そういった感覚が面白くて仕方がなかったんです。そんな日々でした。

「実際に走った者にしか見えない景色」

それは、どんなに語りが上手い人が、百の言葉を以ってして百回同じ話をしても、聞き手には絶対に伝わらない性質のものです。 体に跳ねた泥、その身で切った風、日焼けし過ぎて血の滲んだ腕、酷使した膝の痛み、幾度も行なったパンク修理、トラックにひき逃げされた怒りと、無事だったことへの安堵・・・様々な人との出会い、訪れた土地の食べ物、絶景との出会い。様々な困難を乗り越え、様々な景色を見て、様々な感情を抱きました。
忘れてしまうようなどんなに小さいことでも、その体験の一つ一つが「それ」を構成している重要な要素だからこそ、本人にしかわからない感覚なのだと思います。

「実際に走った者にしか見えない景色」
 あなたも是非、覗いてみてください。